開発者共研計画——BOSS編01

旅人の皆さん、こんにちは。皆さんの『原神』への熱い想いに応えるべく、本日よりコラム——「開発者共研計画」が始まります。これから「開発者共研計画」の連載の中で、開発チームから各担当者に登場していただき、彼らが『原神』を開発する際に用いたデザインコンセプトやエピソードなどを紹介していくのが本コラムです。

 

今日、初めて皆さんとご挨拶するゲストは戦闘デザインチームでプランナー職を務める「トリ」さんです。

 

———以下、大量のGIFが含まれているため、Wi-Fi環境下での閲覧をおすすめします———

 

テイワット大陸の旅人の皆さん、こんにちは。本日の解説役を務めさせていただく「トリ」です_(:з)∠)_。『原神』には様々なキャラクターやモンスター、秘境などが存在します。これから私と同僚の皆で、これらコンテンツの制作プロセスとデザインコンセプトをひとつひとつ紹介していきたいと思います。

 

ではさっそく、今日は面白いモンスターシリーズ——「無相元素」についてお話していきましょう。

 

【無相元素の設定】

無相元素はテイワット大陸において、原始的かつ純粋な元素構造体です。極めて高い純度と強い元素特性を誇り、通常は元素地脈が塞がれている場所や元素エネルギーが噴き出る場所に出現します。ゲーム中、無相元素は規則性のある立方集合体の形をとっています。八つの方形の元素殻が内部の元素コアを包み、道中の旅人へと自発的に攻撃してきます。

 

去年11月のクローズドベータテスト(中国)では、初めて当シリーズのモンスターである無相の雷「アレフ」が実装されました。そして、今回のテストではその同種のモンスターたちが登場し、旅人の皆さんが挑戦してくるのを待っています。

 

【無相元素のデザインコンセプト】

去年の6月に中国で行われたテスト結果から見ると、私どもは上手く「元素」の概念を伝えられていませんでした…多数の旅人さんは「元素反応」を単なる「追加ダメージ」と理解し、状況によって戦略を組み替える旅人さんがあまりいなかったのです。

 

そしてテストが終わり、私どもは様々な解決策を捻り出し、皆さんに「元素」という概念を伝えようとしました。その中の一つが「無相元素」です。旅人さんが「無相元素」と初対面した時、自然と「コイツはXXXでやっつければいいのか」と思わせるようにしたかったのが私どもの狙いです。

 

そこで問題は、「同種のモンスター」との戦闘において、違う元素を起用することでどうやって新たなプレイ体験を与え、表現していくのかに変わりました。この点においては前回のテストで旅人さんが遭遇したアビスの魔術師とかなり似ていますが、これではまだ表現としては弱いです。もっと強烈な形で元素の力を表現し、旅人さんの戦略やチームの組み方などに影響を及ぼす必要がありました。

 

モンスターをデザインするのに、中核を担うのが視覚アートとその仕様です。私どもは無相元素を視覚アートの面から自然の秩序を表現しようと思いました。様々な見た目の丘々人や円形の外見をしたスライムと違い、立方体で整然としたデザインの無相元素。それによって、より高位の生命体であることを皆さんに伝えようとしました。

 

この点において、私どもにインスピレーションを与えてくれたのが新世紀エヴァンゲリオンの使徒ラミエルとトランスフォーマー4のガルバトロンです。前者は簡単な外見をしていますが、変形の能力を持っています。後者は方形粒子の集合体として、その変形過程の視覚表現が私どもの参考になりました。これらのデザインに基づいて、新たな物を作り出そうと私どもは思ったのです。

 

そしてアートチームとの話し合いを経て、次の方向性を決めました。無相シリーズは元素モンスターであり、その外見と動きは従来のモンスターとは違って新たな表現が用いられ、方形の組み合わせと変形をしながら元素スキルを使うことになりました。

 

当初、激しい変形モーションと骨格の構造を表現するのは非常に難儀すると思われましたが、心強いアートチームのおかげで、2019年7月にアニメーションソフトで大量の方形の動きを実現するに至ったのです。

 

初期の無相元素の変形

 

視覚アートの問題が解決したら、その次はプランナーの登場——仕様を決める番です。

 

私どもにとって、シリーズ制のモンスターをデザインするのは初めてでした。そのため、先陣を切って模範となるモンスターが必要だったのですが、その最初のモンスターが「アレフ」の名を持った無相の雷となりました。

 

仕様を決めるにあたり、私どもは以下の点について考慮しました。

1.無相シリーズのモンスターは、攻撃→硬直→攻撃…の攻撃パターンを取る。

2.無相シリーズのモンスターは、戦闘→再生→戦闘…の戦闘パターンを取り、再生の段階で固有の要素を取り入れ、旅人さんがそれを解決する仕掛けを盛り込む。

3.元素構造体であり、コアは攻撃と移動時には守られ外部からのダメージを防ぎ、硬直時に「コアを露出」させる。

4.BOSSのスキルによって、近距離と遠距離キャラが異なるタイミングで攻撃するよう設計する。

 

そして、私どもは詳しいスキルデザイン案を作りました。その中でも代表的なのが「じゃんけん」と「回るレーザー」と「再生」です(理解しやすいのでとりあえずこう呼びます……)。

 

「じゃんけん」———「ターン制」のバトル方式

旅人さんが無相の雷の「攻撃→硬直」の攻撃パターンを掴み、「硬直」のタイミングでダメージを与えるという道すじを作りたいと思いました。そのため、敵が「攻撃」をする時はかなりのスピードで移動し、ダメージも比較的高く設定されています。

 

こういった設計の意図を満たすのが、近距離の連続攻撃です。去年の7月、とある戦闘プランナーのアイディアで、私どもは「グー→チョキ→パー」の近距離連続攻撃パターンを決めました。三つの攻撃手段はそれぞれ少しずつ異なる攻撃範囲、方向、スキル硬直を持っていて旅人さんが上手く反応できないよう設計しています。

 

 

このような「ターン制」のバトル要素を更に強化し、ランダム性を加えるため、以降のアップデートでは「じゃんけん」要素を含んだスキルをシームレスに繰り出すよう変更する予定です。なので旅人さんが実戦でアレフと出会う時、アレフが二回連続で攻撃してくることがあるのでお気を付けくださいね。

 

 

こういった攻撃パターンの存在で、旅人さんが一方的に長時間攻撃したり照準モードを維持したりするとピンチに陥ります。このような戦闘システムの存在は戦闘のテンポを引き伸ばし、一体のキャラクターだけでゲームを進行させるのを防いでくれます。

 

「回るレーザー」——デザインの継承と回避

旅人さんが無相の雷と対峙する時、ゼロからその攻撃に慣れなくてもいいようにしたいと思いました。また単純なダッシュだけでは、その対処ができないようにもしたいと思いました。そのため、無相の雷の一部はすでに登場しているモンスターや仕組みを踏襲しつつ、ダッシュだけでは脅威を消し去れない仕様にしてあります。

 

例えば、旅人さんとガイアが初めて狼の神殿に入った時、炎を噴出する装置に遭遇します。もちろんダッシュで突き抜けることもできますが、ガイアの氷元素の力で「黙らせる」ことも可能です。前回のテストの秘境にも同じような装置がありました。ただ、それは炎を十字型に噴き出すことでより強力な装置となっており、ダッシュでは通り抜けることができませんでした。こういった時、旅人さんは他の戦略を選ぶ必要が出てきます。

 

 

 

これを私どもはデザインの継承と呼んでいます。旅人さんが過去の経験から徐々に「アクションよりも戦略」を選んだ方が戦闘に有利であると認識させようと思ったのです。この考え方に基づき、無相の雷の回るレーザーが誕生しました。これは十字型の装置よりも遥かに強力な技となります。

1.再生段階に入らせること以外、元素反応を用いても停止させることができない。

2.レーザーは岩元素の創造物や壁で防御が可能。

3. 無相の雷のスキルが終わり、結晶が崩壊して再生が完了するまで、その場は絶対に安全。

4. レーザーは強力なダメージを与えると同時にノックバック効果を与え、ダッシュでの回避を困難にさせる。

 

 

「再生」

先ほど少し触れたように、無相元素はHPが尽きると「再生」段階に入ります——こいつらを簡単に倒すことはできません。エネルギーが尽きるまで、無相元素は破砕と再生を繰り返します。

つまり、無相の雷は倒されても即死せず、幾つかの欠片に分解されるのです。時間内にその欠片を処理しないと、無相の雷は残された欠片の数によって一定のHPを持って再生します。元素反応を起こすスキルによって、その欠片の雷元素を消費させることでやっと討伐ができます。

 

 

そして、これから皆さんがお会いすることになる無相の風と無相の岩は、「風に乗って滑翔する」、「岩柱を破壊する」といった仕組みで再生を妨害することが可能です。これらは改めて私どものデザインコンセプトを表現しています。放たれるスキルにはある程度の既視感があり、攻略するための学習もハードルが低くなっています。無論、その中で各元素の特性を活かし、異なる戦闘体験を演出しております。

 

無相の風

 

無相の岩

 

無相の雷をゲーム内に実装したのは2019年の10月のことでした。テストチームが初めて無相の雷と戦った時、戦闘プランナーに文句を言っていたのを覚えています(笑)。実際にプレイしてみると、プレイヤーにとって煩わしい点がかなり多かったのです。

1.その頃のテスト版では、無相の雷のコアが露出する時間はたったの5秒。それに加え、スキルの発動頻度も高く、難易度がかなり高くなっていました。

2.敵は一定の行動範囲内しか移動できないため、その移動範囲に縛られることに煩わしさを覚えた。また、その範囲から出てしまい敵が回復してしまうケースが多かった。

3.全てのスキルがクールタイムに入ってしまった時、ただ茫然と旅人さんは対峙することになった。

 

それからというもの、私どもにとって苦難の日々が続きました。チームは大量の内部フィードバックを処理しながら、近づいてくるクローズドベータテストの準備と新規内容の制作で手一杯。しかし、チームメンバーの努力の甲斐もあり、昨年11月には無相の雷の動きは改善されました。その後、旅人さんたちの間で攻略法を話し合ったり、マルチプレイで他の旅人さんに協力したりする行動を目の当たりにして、私どもは心から嬉しくなりました。

 

今回のテストでも、存分に無相の雷や他の無相モンスターとの戦いを楽しんでください。これからも私どもは開発に力を入れ、皆さんにもっと面白い内容をお送りできるよう頑張ってまいります。

 

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トリさんありがとう!第一期の「開発者共研計画」はここまでです。これまでの解説を通して、無相元素シリーズの開発経路とデザインコンセプトを分かっていただけたら幸いです。

 

早くこのモンスターたちと対決したいと思いませんか?無相元素以外にも、原神には様々な面白いコンテンツが隠されております。高品質で最高の体験を実現させるため、これらのコンテンツの開発に今後も努めてまいる所存です!

 

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