開発者共研計画——『原神』音楽制作秘話01

旅人の皆さん、お久しぶりです。最近はいかがお過ごしでしょうか?学業やお仕事は順調でしょうか?

 

先日、OST(オリジナルサウンドトラック)とその制作のバックストーリーを公開したところ、コメント欄にて様々なご意見・ご感想をいただくことができました。皆さんの音楽に対する情熱を感じることができ、とても嬉しく思っています。

 

そこで今回の開発者共研計画では、miHoYo音楽プロデューサーであるZoeと『原神』音楽プロデューサーのYu-Peng Chenを招き、皆さんに「音」のある共研計画をお送りしたいと思います。

 

旅人の皆さん、こんにちは。HOYO-MiXZoeと、Yu-Peng Chenです。本日は皆さんに『原神』の音楽制作秘話をお話しさせていただくことになりました。

 

まず全体を通して、『原神』の音楽デザインはゲームそのものに基づいて作曲がされています。『原神』の広大なオープンワールドを形作る大陸——「テイワット」。プロダクションチームがアートデザインの面からこの世界独自の美学を与え、そこに相応しい音楽を飾り付けるのが私たちの役割りです。

 

ゲームの多様性を皆さんにお伝えするために、私たちはオーケストラをベースに世界各地の音楽を要素として加えました。場面ごとの雰囲気に合わせて変化する音楽は、ゲームの雰囲気にマッチするようになっています。

 

また「ファイナルCBT」の開催中、サウンドチームは皆さんから届くOST関連のフィードバックに注目してきました。各サイトの生配信を(コッソリ)拝見して、旅人の皆さんがアカツキワイナリー周辺の音楽を好んでいることや、ある配信者がログイン画面の音楽をBGMとしてリピート再生していることを知りました。

 

一部の旅人さんは、ゲームのOSTを自ら作成しアップロードしていましたね。ただ皆さんの音楽に対する熱い気持ちはとてもよく伝わりましたが、一つ重要な点がありますのでお伝えします。テスト期間中の音楽は最終版ではありません。

 

そのため数日前、私たちは正式版となるゲームOSTを公開しています。今は各音楽プラットフォームで再生することができるので、是非「原神」を検索してみてください。

 

一、『原神』のテーマ曲——明確な方向性と繰り返される困難な作業

『原神』のテーマ曲はかなり早期の段階で創作の方向性が決まっていたため、順調にプロデュースすることができました。用いられる楽器とその地域独自のスタイルがマッチするよう、各地域ごとに異なるテーマを設定し、そこからキーワードを練り上げて音楽を作り上げています。

 

テーマ曲のひな型となるものを作った後、細部の表現の調整を行いました。その際、サウンドチームは細かな問題にいくつもぶつかることになります。例えば、どの地域にテンポの速い音楽を用い、どの環境ならゆったりとした音楽を用いるかなどです。早期の制作段階では思いつきもしなかった問題が毎日のように発生しました。

 

これらの問題は、その後の制作の過程で繰り返し改善を重ねていっています。その過程により細かな変化はあったものの、テーマ曲の全体的な雰囲気はあまり変わっていません。テーマ曲のコンセプトはクラシカルのまま。それを楽器演奏によって自由、純粋、情熱を孕んだ冒険であることを表現するようにしています。

 

これらのキーワードは、私たちが音楽の面から『原神』を理解し、そして導き出した解釈でもあります。しかし、明確な創作の方向性があったとしても、demoが何バージョンも出来るほど困難な制作過程を繰り返すことになりました。旅人の皆さんの中には、このテーマ曲がどのように作り出されたのか気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか?

 

 

 

音楽プロデューサのデモ演奏——『原神』テーマ曲demo/Yu-Peng Chen

 

最初は、単にピアノで弾いたdemo曲でした。初期のピアノdemoから無数の修正を経て、最終版が完成したのです。私たちはその一部記録を残しています。

 

『原神』テーマ曲トラックリスト/ by Yu-Peng Chen

ログイン画面BGM―昼トラックリスト

 

v0では、ピアノの単音(右手)で演奏する原神のテーマメロディ、このバージョンをもって私は以下の項目を遂げようとしました。1.和声と管弦楽器がなくても、聞き飽きないこと。2.変奏曲として組み替えられる可能性を持っていること。

 

v1では、テーマ曲のメロディを決めて、v0のピアノパートに和声伴奏を入れました。この純粋なピアノ曲は早期のテスト版で使われたのですが、プレイヤーたちからいい反応をいただけました。

 

v2では、ピアノ版を完成させた後、簡単な弦楽を曲に編曲し、黄昏のログイン画面に採用しました。(現在、黄昏のログイン画面は新しい曲に切り替わっています。)

 

v3では、アイリッシュ・フルートでテーマ曲を演奏してみました。(フルートは私自身が吹いています。)

 

v4から、私は本格的な曲の制作に取り組み始め、テーマに多様な可能性と音楽性を入れました。編曲をするにあたり最初に決めたことは、この曲を叙事性のある広大な楽曲に仕上げることでした。また起伏の大きな管弦楽器によって、原神の広い世界を感じさせたいと思いました。こうすることで、プレイヤーが曲を聞いた途端、ゲームに強い期待感を持つようにしたかったのです。

 

v5は最終版であり、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団で収録したものです。私は前奏のピアノをハープに変え、最初のバイオリン独奏をアイリッシュ・フルートに変えました。そして、女声のコーラスを入れました。

 

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ログイン画面BGM―夜トラックリスト

 

v1では、女声のハミングだけでテーマ曲の単音メロディを表現することで、彼方から聞こえるような雰囲気と、神聖さ・太古の響きを表現してみました。

 

v2は変わらず女声の演唱です。このバージョンで私はアカペラ形式を採用しました(コーラスは基本的に私自身が歌っています)。

 

v3では、元々の歌詞「AH」をベースに、様々な思考錯誤を重ねた結果、曲を昇華させるため私が書いた歌詞を付け足しました。歌詞はただの語感によるもので、特に意味はありません。聖歌のような曲です。

 

v4では、以前のバージョンが聴いていて飽きやすく、私が創った空想の言語も厳密性には欠けるため、最終的に諦めることとなりました。そして、耳障りの良い「Wu」でメゾソプラノに改めて歌ってもらいました。メゾソプラノの音色は曲に落ち着いた感覚をもたらし、より神聖な雰囲気を与えてくれました。そして、これを夜のログイン画面に採用することにしたのです。

 

 

 

『原神』テーマ曲トラックリスト/by Yu-Peng Chen

 

私たちは、ログイン画面のBGMの完成度を極限まで高めたいとずっと思い続けていました。ログイン画面のBGMとは、往々にしてプレイヤーに深い印象与えるものだからです。一つのゲームをクリアして何年か経った後、そのゲームのログイン画面のBGMがふいに頭の中に浮かぶなんてこと、皆さんも覚えがあったりするのではないでしょうか。

 

つまり、音楽とは画像や文字よりも純粋な言語として存在し、記憶を容易に呼び起こすことができるものであり、私たちの心の奥底にまで届くものなのです。私たちは『原神』のテーマ曲に、そういった言語になって欲しいと考えています。

 

二、『原神』OSTのデザインポイント——音楽とゲームの相乗効果

以前より旅人さんたちから、『原神』はゲームそのものと音楽どちらが先にできましたか、とよく聞かれました。この質問に対し、本日はこの場を借りて音楽デザインの観点から解説したいと思います。

 

一番最初に『原神』の音楽プロデュースを始めた時、私たちが参考にしたのは一枚のCGでした。若い旅人が崖に腰掛け、遠くにあるモンドを眺める図です。

 

当時の私たちはこの図からでしかゲームを読み解くことができず、ゲームのテーマや核心となる部分、感情の流れなど一切知るすべがありませんでした。ですが、私たちの知らない細部にこそ、音楽を生み出す材料が宿っていると感じたのです。

 

その細部を知るため、プログラマーやIP、アートチームの仲間と繰り返しコミュニケーションを取り、ゲームを理解することで創作の方向性を調整しました。

 

『原神』CG

 

比較的、大きく変化をしたのはゲーム内の環境BGMです。繰り返しテストを重ねた結果、理想的なBGMの音量を設定することができました。この音量に設定された環境BGMはオープンワールドに見事なまでに融合し、ゲームの雰囲気を引き立てます。

また、各チームの方々と一緒にゲームのテストを幾度となく行わせていただきました。これは実際のゲームプレイでサウンドの演出をチェックしたかったからです。

 

ここで改めて、開発チームの皆さんにはお礼を申し上げます。

 

BGMを変更する度に既存のゲームプログラムをリセットする必要があったのですが、開発チームは最後まで対応してくれ本当に助かりました。そして、テストや研究を続けていくうちに、音楽もゲームデザインに影響を与える要素であることに私たちは気付きました。

 

例えば璃月港。この国のデザインを決める初期段階、アートチームは様々な資料を参考にし構想を練っていましたが、ピンとくるものがなかなか見つけられず、ある種のスランプに陥っていました。

 

そんな時、私たちが提供した璃月の音楽が彼らに新たなアイディアを与え、この国のデザインを完成形へと近づけさせたのです。

 

璃月港の音楽とデザイン

 

実際の作業を通じて、私たちはゲーム音楽の制作がどれだけ難しく、細かい作業であるかを切実に感じさせられました。これら工程の中で一番難しいのは創作ではありません。創作ですべての問題を解決することはできず、代わりに建築家のような正確で緻密な作業が必要でした。

 

もしゲームを巨塔に例えるのならば、音楽は特別な木材です。サウンドチームの仕事は木材を準備することだけではなく、それを最適な場所に嵌め込むことになります。作曲が終わると、次はレコーディングに入りました。理想を実現させるため、私たちはコストを惜しむことなく、最高の演奏家と最新の音楽表現を求めました。

 

例えば、モンドのテーマ曲の独特なスタイルを表現するために、私たちはイギリスへと赴き、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団を招いてAIR Studiosで録音しています。ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団は世界有数の音楽品質と影響力を有しており、私たちが求めるモンドの音楽を完璧に再現してくれました。

 

これから先も私たちはこの理念を貫き通すつもりです。音楽の質を高めると同時に、世界各地の名門楽団と手を組み、オーケストラをメインに世界に通用する音楽を多数創作していきたいと思っています。

 

『原神』は、ゲーム音楽へのこだわりに計り知れないほどの重きを置いています。サウンドチームと開発チームは常に影響し合い、優れた品質を目指して尽力してきました。

 

だからこそ、私たちは音楽の質を絶え間なく高めることができ、BGMを繰り返し調整していくことで、旅人さんにより理想的なゲーム体験を提供することができていると考えています。

 

三、『原神』音楽のゲームにおける具体的な表現

(一)ログイン画面の時間の移り変わり

ゲーム内の音楽表現で言えば、真っ先にログイン画面の「4つのパターン」が思いつきます。ファイナルCBTで注意深く見ていた旅人さんはすでに気付かれているかもしれませんが、『原神』のログイン画面は時間によって昼、黄昏、夜、夜明けの4つの段階に分かれているのです。この各シーンごとに合わせ、ログイン画面の音楽も少し手を加えています。

 

この4つの時間帯はある一つのメロディを共用しています。ただ時間帯によって表現方法を変え、細部を大幅に変更しているのです。昼のテーマ曲は盛大であり、夜明けと黄昏のテーマ曲は優しい雰囲気を。そして、夜になると女声のハミングが加わり、神聖さがプラスされます。

 

また、より強い変化を演出するために、曲の交代に合わせてハープの間奏を入れました。Yu-Peng Chenが直々に昼版のテーマ曲を指揮し、曲の感情的な部分を強調させています。旅人の皆さんもぜひ時間を見つけて、ログイン画面の音楽を聴いてみてください。

 

ログイン画面の「4つのパターン」

 

(二)BOSS音楽:感情誘導の音楽

いくつかの楽曲の中で、特に印象深いのが風魔龍トワリンのBGMです。

 

この曲を制作する時、私たちは通常の「熱い」戦闘曲は放棄し、感情の誘導に焦点を当てました。風魔龍のストーリーを音楽に溶け込ませることで、ひと味違う曲を作り出したかったのです。

 

トワリンだけでなく、『原神』の音楽は全体的に「感情誘導」に傾けています。私たちは、旅人さんが音楽をバトルの演出を盛り上げるためだけの要素として認識するのではなく、『原神』の世界を、ストーリーを、歴史を理解するのに大切な一環として認識するようにさせたかったのです。

 

風魔龍のBGMがそうであったように、風魔龍のストーリーを体験したならば、きっとこの曲からトワリンの「遥かな思い」に共感できるかと思います。

風魔龍トワリン

 

風魔龍トワリンと奔狼の領主アンドリアスのBGMには、それぞれ小ネタが隠されています。例えば、皆さんが耳にしたハミングはYu-Peng Chen本人のものです。音楽の感情を最大限に引き出すために、プロデューサー自らが「戦場」に出るなんてことは珍しくありません。こういった方法をいくつも試していき、音楽で旅人さんと『原神』の繋がりを強め、このゲームをより好きになってもらいたいと私たちは思っています。

 

四、『原神』音楽のあと書き

音楽のレベルアップをこれからも続けてまいります。それと皆さんが聴いた奔狼の領主BGMはまだMidi Demo段階であり、リリース版では合唱を導入するつもりです。

 

ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団1

 

『原神』は音楽に強いこだわりを持っています。ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団に依頼したのも、その自己表現力と情緒を演出する技術力からです。今は機械で多様な音や効果を出すことができるようになっていますが、真に人の心を動かすのは演奏家自らが感情を注ぎ込んだ音楽だと私たちは思っています。

 

『原神』の音楽がただの音符の塊ではなく、人の感情や文化を含んだ芸術になることを願っています。そして、皆さんが『原神』をプレイした時、人のあらゆる感情を網羅した音楽に心を震わせてくれれば幸いです。

 

お二人ともありがとうございました!旅人の皆さん、『原神』の音楽への興味がまだまだ尽きないのではないでしょうか?プロデューサーによるログイン画面のBGMBOSS戦のBGMの解説や、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団のレコーディング風景を見てみたくはありませんか?

 

もし気になりましたら、以下のリンクを是非ご覧ください。きっと旅人さんの興味を満たせること間違いなしです!

 

もっと『原神』のことが知りたい、こんな開発内容を聞きたいといった点がありましたら、是非公式Twitterのコメント欄でお知らせください。また各チームを駆け回って関係者をお呼びいたします!

 

いつも応援してくださる旅人さんに最大限の感謝を。では、また次回お会いしましょう(^U^)

 

出典:

1、https://www.youtube.com/watch?v=qxZuy8oPwFM

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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